J-POWER 只見展示館が2022年9月28日にリニューアルオープン!
お気に入りの、動くゴム堰模型が未だ健在かがどうしても気になり、その4日後、只見線全線再開通に合わせて開催された、水の郷うまいもんまつりの豪華なスケジュールの合間を縫って、早速行ってきました!
只見町インフォメーションセンターで借りた話題のISSIMOで、これまたリニューアルオープンで話題のJ-POWER 只見展示館へ、更に昨今話題のVRでのダム見学。話題・話題・話題づくしの只見を巡る旅、J-POWER 只見展示館編その1。(館内情報SNSアップOK。なお、記事には展示にない内容もあります。)
J-POWER 水とエネルギー 只見展示館
今回は、J-POWER 只見展示館のゴム堰模型の確認が目的だったので、電動アシスト自転車は2時間で余裕かなと思っていましたが、新しく始まったVR内のコンテンツもなかなか豊富で見応えがあり、館内の新しい展示などもじっくり見ていたら、2時間はあっという間でした。
ゴム堰模型健在、よかった!ε-(´∀`*)
よかった、リニューアルオープン後もゴム堰模型は健在でした。動画もSNSアップOKとの事だったので、動くゴム堰の様子を。
本物の方の黒谷ゴム堰の様子 2010年8月当時(※今は車で行けないそうです)
以前は、このゴム堰の本物の方 —-只見川の支流、黒谷川の上流にある黒谷発電所の黒谷取水ダム(ゴムダム)— にも、車で山道を苦労すれば行けたのですが、水害で道が通れなくなって、今はヘリでしか行けないようです
実はゴム堰ダムとしては世界最大規模らしい
只見町公式HPのダムを紹介しているページによると、黒谷ダムは世界一のゴム堰ダム(取水ダムは高さ6m、長さ43.1mの圧縮空気によって膨らますダム)らしいですが、多少紹介のあった資料を見つけたのでシェア。
水工学におけるインフレータブル(膨張式)構造
2013年のPIANC SMART Rivers(2004 年に第 1 回が開催されて以来、2年に1度開催され ている内陸水運に関する国際学会)のカンファレンス用に作成された資料の1つのようです。こちらは誰でもレポートのPDFや、レポート内の画像をダウンロードできるようなので、ご興味ある方は是非。
レポートのダウンロードリンク Inflatable Structures in Hydraulic Engineering September 2013 Conference: SMART RIVERS 2013 At: Liege (BE), Maastricht (NL) Authors:Michael Gebhardt
写真及び本文の掲載箇所 Paper 41 - Inflatable Structures in Hydraulic Engineering 2 APPLICATIONS SMART RIVERS 2013 Paper 41 - Page 3/9
ーー 空気式では、黒谷ダム(日本)が幅73.10m、高さ6.00mとさらに高い(図5)。 水封式では、アズマックダム(トルコ)が現存する最も高いダムで、幅48.00m、高さ5.00m、水力発電用として2009年に設置されたものである(図6)。ーー
インフレータブル、つまりこの膨らます系のゴムダムには、空気を入れるものと水を入れるものがあるらしく、空気を入れる場合の大規模なダムの良い例として、黒谷ゴム堰が挙げられているようです。
黒谷ダムの写真 Figure 5 - uploaded by Michael Gebhardt Kurotani Dam, Japan, air-filled (Photo : Sumitomo Electric Industries, 2001) この写真のダウンロードリンク
レポートには、こんなお勉強になりそうな写真がたくさんありました。
インフレータブルダムの最終形状に影響を与える幾何学的パラメータについて。内容はさっぱりです。
Figure 12 - uploaded by Michael Gebhardt Relevant geometric parameters taking influence on the final shape of an inflatable dam この写真のダウンロードリンク
Bralia(ルーマニア)近郊の内ドナウデルタにあるFundu Mare島での生態系修復活動。
ヨーロッパの河川は長年、大規模な工学的対策が実施されてきたことから、ルーマニアのドナウ川沿いでは、かつての湿地や湖などの大部分が消滅し、湿地帯のフンドゥマーレ島くらいしか残っていないようで、さらに近年は、水位低下や水域へのヤナギの侵入が、島の高い生物多様性に影響を与えているため、その生物多様性を守るためのプロジェクトが立ち上がり、その一環としてなされた研究のレポートのようです。
なぜ生態系の修復活動の話に、黒谷ゴム堰の紹介があるのかと思いましたが、島内の水位を調整できるためなのか、袋体の堰の設置が、生物多様性の保全を可能にする修復シナリオの1つとして検討されたようで、その流れでゴム堰も関係してくるみたいです。
PDFリンク Ecosystem restoration at Fundu Mare Island in the Inner Danube Delta near Braila (Romania) Civil and Environmental Engineering (2 year) Submission date: February 2016 Supervisor: Jochen Aberle, IVM Muriel Zazie Madeleine Brückner Norwegian University of Science and Technology Department of Hydraulic and Environmental Engineering
前述のレポートと同じ写真が使われています。先のページからダウンロードして大学のレポートが書かれたのかな?
写真の掲載箇所 2 State of the art 2.1 Restoration of wetlands 湿地帯の復元 2.1.3 Hydraulic structures 水理構造物
ゴム袋体を使用した堰;左の写真はスケッチ(Giesecke et al.) 右は黒谷ダムに設置された空気入りゴム堰の例(Gebhardt, 2006)
PIANCの2018年のレポート。水上輸送インフラの様々な分野をカバーする各ワーキンググループの中の、InCom WGのレポートのようです。こちらは購入が必要で、€ 199.00とありました。今だと日本円で28,000円くらい。
レポートの購入 InCom WG 166: Inflatable Structures in Hydraulic Engineering (2018) Written by: InCom WG 166 Published: October 05, 2018
ただ、黒谷ゴム堰の図が使われているということは、こちらに掲載されているPIANCの2018年のレポートの目次で確認できます。
レポートの目次PDFリンク INFLATABLE STRUCTURES IN HYDRAULIC ENGINEERING (Hydraulic Engineering Information CentreのHP内)
図 2.28 黒谷ダム大型ゴムゲートの例(空気充填式,高さ 6.0m,長さ 34.5m, 提供:Marsima Aqua system)
Marsima Aqua systemとは何かと思ったら、水関連のインフラを手掛ける丸島アクアシステムという大阪の会社のようです。ゴム堰の説明のページには、残念ながら黒谷ダムの姿はありませんでしたが、ゴム堰についての分かりやすい説明がありました。
結局、黒谷ダムの長さ(幅)は?
只見町の公式HPでは、”取水ダムは高さ6m、長さ43.1m”。
2013年のPIANC SMART Riversでは、”黒谷ダム(日本)が幅73.10m、高さ6.00m”。
PIANCのInCom WGの2018年のレポートでは、”高さ 6.0m,長さ 34.5m”。
どこからどこまでを長さと取るかでも変わるのか。。🤔 最大出力とか、強いていうなら高さとかが基準で、幅はあまりダムの規模という側面では意味を成さないのでしょうか。
PIANC WGについての補足など
PIANC-Japan(国際航路協会日本部会)もありました。サイトより情報を抜粋。
現在 PIANC WGは次の5つの委員会の下で活動している。 内陸水路委員会(InCom) WG 海港委員会(MarCom) WG 環境委員会(EnviCom) WG レクリエーション水路委員会(RecCom) WG 国際協力委員会(CoCom) WG 若手技術者委員会(YPCom)WG
PIANC SMART Riversは、2022年にも開かれているようです。
PIANC Smart Rivers 2022が開催されました
もっと知りたい方へ: ゴム袋体をゲート又は起伏装置に用いる堰のゴム袋体に関する基準(案) 国土交通省 ゴム引布製起伏堰及び鋼製起伏堰(ゴム袋体支持式)のゴム袋体に関する技術資料 一般財団法人国土技術研究センター 水資源の観点からの湿原の役割について〜ドナウ・デルタの事例〜 地球環境研究センター
さて、安心したところで、他の展示もじっくり。次回は、田子倉ダム建設当時の写真と、只見線の歴史メモ。